朳差岳 ( えぶりさしだけ ) Mt.Eburisashidake 関川村



新潟県岩船郡関川村にある飯豊連峰縦走路の北の起点の山である。標高1,636.4m。日本二百名山の一つ。日本海に注ぐ一級河川荒川の支流、大石川の源流に位置する。
山名の由来は、農具の一種、田植え作業直前に水田表面を平にするために使われる道具の「えぶり」(柄振・朳)を担いだ人の姿をした雪形が、田植えの頃に現れることとされる。荒川沿いの村々で農事暦として親しまれてきた。

1949年(昭和24)に磐梯朝日国立公園に指定され、1964年(昭和39)6月、第19回国民体育大会(新潟国体)山岳競技場に選ばれ、全国の岳人に広く知られることとなった。
登山口の大石ダムからは2つのコースが延びる。一つは東俣登山道で国体の際に切り開かれた。もう一つは西俣登山道で、慎重に通過すべき箇所が多くある。
頂上には三等三角点と石の祠が設置されている。
山頂の肩にある大草原長者平には池塘がいくつも点在する大草原となっていて、山頂付近は、春のハクサンイチゲ、夏のニッコウキスゲ、秋のハクサントエリカブトの群落の高山植物は連峰でも有数といわれている。
山頂から南に100m下ると、1992年(平成4)に立て直された無人の朳差小屋がある。木造2階建ての小屋(50人収容)で、通年無料で利用できる。トイレは別棟で2室ある。

🔶東俣コース

大石ダムから舗装された道を徒歩40分で彫刻公園に着く。付近に林道のゲートがあり、ここで登山届を記入する。一般車両は彫刻公園に置く。
林道を8km進むとブナイデ橋で、橋を渡ると月夜平である。地元では木寄平と呼ばれ、材木を川に流す場所であったといわれている。
尾根道をしばらく登り、道は三吉ノ峰の山すそを右岸に巻き斜面をトラバースし、カモス橋で左岸に渡り戻す。橋からカモスの頭までが高低差600m近い、コース中一番の急登だ。
847mのカモス頭は、ブナ林の平坦なピークで前朳岳が望める。ここから権内尾根となり、展望の利く尾根道となる。
権内尾根のタムシバの咲く主稜を進み、標高1164mの千本峰からは400mを超す標高差の登りが続き、1534mの前朳差岳に出る。ここから目の前に初めて朳差岳山頂を望める。
稜線を1時間で朳差岳頂上の肩にあたる長者平に着く。長者平には大小の池塘が点在する草原が広がる。15分で朳差岳山頂となり、頂上からは眼下に避難小屋が見える。頂上には三等三角点と石の祠が設置されている。

🔶西俣コース

西俣登山道は、大石ダムから2kmで滝倉橋に着く。ここから西俣川沿いに進む。高度感があり慎重に通過する個所が多くあり、西俣川の支沢を数ヵ所渡渉する。特にガジカネ、イズグチ沢、ゼガイ沢付近は慎重に通過したい。
西俣川の吊り橋を渡ると間もなく大熊小屋に到着する。小屋は昭和53年(1978)に改築された鉄骨造りの小屋(30人収容)で、通年利用可能で無料だ。小屋から大熊沢を渡ると大熊尾根の急登となり、カリヤス平、新六の池を経て朳差岳避難小屋の前に出る。避難小屋周辺にはハクサンイチゲニッコウキスゲの群落が眺められる。

🔶奥胎内コース

奥胎内ヒュッテから林道を歩いて足ノ松尾根登山口へ。登山道から小さな平頂の姫子ノ峰に着く。ここからは、やや緩やかな尾根や狭い岩稜の変化やある登りが続き、やがてヒドノ峰に着く。窪みの湿地があり、ブナの道を登る。密生する低木帯の小さなピークを次々と越えていく。大石山は主稜線上の小ピークで、山頂がわかりにくい。縦走路と足ノ松尾根の分岐点は鞍部のササ原にある。
鉾立峰へは急坂を登る。鉾立峰から朳差岳にかけてはお花畑で、色とりどりの花が湿性している。



月夜平のブナ林

大石ダムから、東俣川(東俣コース)沿いに林道が走り、歩いて2時間30分の林道終点付近の月夜平のブナ林がある。月夜平の台地はブナの原生林で囲まれていて、朳差岳登山道の途中にあることから、登山者が幕営地としてよく利用する。
春のブナ林の芽生え、夏の濃緑、秋の黄葉、冬の白い幹の林立と四季を通じた感動がブナ林にある。





























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