月不見の池 Tsukimizu pond 糸魚川市
早川谷の中心地、新町地区から、西よりに坂を登ったところに、奇岩巨石で有名な月不見の池 がある。標高160メートル、「日本一大岩」と命名された直径数十メートル巨岩塊もあり、ごつごつした巨大な安山岩や凝灰角礫岩が池を取り囲むように並ぶ。 約400万年前(新生代第三紀鮮新世)にフォッサマグナで火山活動が起き、火山から噴出した溶岩や凝灰角礫岩により山地が形成された。この山地が後の地殻変動で大規模な崩壊を起こし、巨岩塊が運ばれたと考えられる。月不見の池周辺ばかりでなく、それよりも上流部の早川沿いの谷間には、広範囲にわたって多数の巨岩塊が点在している。 月不見の池は、この大規模崩壊によって生じた凹地に湛水した池で、池面積は約2.9㌶。そのために、池に流れ込む川はなく、ほとんどは湧水によるものである。 月不見の池周辺を代表する植物はコナラの群落杉の植林である。この樹木に藤蔓が何本も絡みつき、池に垂れさがるほどに覆っている。岸辺をふちどり、青い水面と調和して、日本庭園風の趣を見せている。巨岩や藤蔓のために池に映る月が容易に見えないことから、このような名前が付けられたといわれている。 月不見の池は、藤の名所として知られ、5月中旬から6月上旬にかけて、甘い香りが池の周囲に漂う。毎年5月中旬には池の近くの新町地区とともに「藤まつり」が催される。 池を巡る道は巨大な岩の間をぬうように起伏に富んだ険しいが、さまざまな野鳥のさえずりが心を和ませてくれる。池にはいつもセキレイの姿があり、カワセミもしばしばこの池を訪れる。 池周辺の林の中では、アオゲラ、アカゲラ、コゲラ、それにさえずりの美しいオオルリ、ウグィス、キビタキが互いに競うかのようになく。イカル、メジロが負けじと鳴き、サンショウクイが頭上を飛ぶ。 近くの「八十八か所巡り」は、大崩壊によって運ばれた巨岩塊が多数集まった場所である。四国八十八か所を模して安政年間に玉瑞和尚(羅漢和尚)が霊場をつくったと伝えられる。八十八の石仏※ストリートビューが岩間に安置されており、巨岩塊の間をめぐるようにつけられたコースは一周1時間ほどを要する。(案内図) |
月不見の池 越後八十八ヶ所